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第84回日本宗教学会学術大会 研究発表報告

 2025年9月14日(金)~16日(日)、第84回日本宗教学会学術大会が上智大学で開催され、弊所副所長の飯島孝良が「戦中から戦後に到る宗教(史)研究―日本と「東亜」をめぐって」と題したパネル発表を企画し、研究発表を行いました。
 いわゆる「戦後歴史学」は、明治以来の日本国家(観)へ反体制的な批判を展開しながらも、最終的に「日本」という主語で国民国家を語るものとなったとも批判的に回顧されています。こうした中、戦中の歴史家や思想家や宗教研究者らに構想された「東亜」という枠組は、戦後には皇国主義的として厳しく批判されましたが、この「東亜」は、帝国主義の理論的裏付けともなれば、国家単位に留まらない世界市民的な「民」を語り得るものともなり得たのではないか――このパネルの課題は、そうした「東亜」という枠組に関連した日本の宗教(史)研究が戦中から戦後にどう変遷したか、これを批判的に再検討することに据えました。

 パネルの登壇者ならびに講題は、以下の通りです。
◆飯島孝良
「禅文化史観と「大東亜史」―芳賀幸四郎の戦中と戦後を参照軸に―」
◆齋藤公太先生(北九州市立大学)
「西谷啓治における「東亜」と「神ながらの道」」
◆何燕生先生(郡山女子大学)
「柳田聖山における戦争体験とその思想への影響」
◆小田直寿先生(大阪電気通信大学)
「戦中から戦後における家永三郎の時代認識とその仏教史研究の関係」

 コメンテータは、岩田文昭先生(大阪教育大学)に御願い致しました。

 質疑のなかでは、戦中から戦後における「東亜」の位置づけは、無教会主義キリスト教や日蓮主義と比較することでより明確になるのではないかという示唆や、或いは戦後世界で台頭した共産主義体制に対して各宗教がどのように対峙していったのかを検討すべきではないかという見解なども出されました。このように、本パネルのように戦中と戦後の変遷を分析することは、現代の我々が宗教史に向ける眼差しを問い直し得る可能性があるように存じております。
当日にパネルに御参加頂きました皆さまには、改めて御礼申し上げます。