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2025年度学位記授与式を挙行しました

3月17日(火)、真人館メインアリーナにて「2025年度学位記授与式」を執り行いました。

本日をもちまして、226名の学部生、7名の院生の皆さんが卒業・修了を迎えました。

正門ではご家族や友人と共に記念撮影をする卒業生の姿が多く見うけられました。

卒業そして修了、誠におめでとうございます。


【 式辞 】


 本日ここに学位記を受け取られた皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんのこれまでの努力と学業への専心に敬意を表し、花園大学教職員を代表して、心よりお祝いを申し上げます。皆さんを励まし支えてくださったご家族の方々にも、感謝と祝福の意をお伝えしたいと思います。

 

 この春、大学院を卒業する方は7名で、その内訳は修士課程文学研究科6名、修士課程社会福祉学研究科1名です。学部生は226名が卒業を迎え、その内訳は文学部78名、社会福祉学部148名です。本日、学位記を手にされ、ここに至るまでの苦労や仲間と共に経験した感動など、様々な思いを巡らせていることと思います。

 

多様性と普遍
 卒業に当たり、あらためて花園大学の教育について考えてみましょう。花園大学は国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の基本哲学である「誰一人取り残さない-leave no one behind-」を基本に、学生一人一人を大切にしたていねいな教育に取り組んでいます。そして、周辺化されがちな人々を包摂する社会の実現に向けて努力しています。

 

 「みんなちがって、みんないい」大正末期の詩人・金子みすゞの「わたしと小鳥とすずと」のこの一節は、多様性を肯定するメッセージとして広く親しまれています。

 

金子みすゞ「わたしと小鳥とすずと」

 

私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
とべる小鳥は私のやうに、
地面(じべた)を速くは走れない。

 

私がからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴る鈴はわたしのように
たくさんなうたは知らないよ。

 

鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。

 

 しかしながら、元大阪大学総長で哲学者の鷲田清一先生が、2025年(令和7年)10月28日の朝日新聞「折々のことば」において次のように語っています。
 「「人類の普遍」に訴えることが局地的な伝統や権威からの解放につながる状況は21世紀に入って反転し、生の多様性の尊重が相互の孤立へと傾きだしたと人類学者は言う。SNS等の標準装備による均質の普遍ではなく、互いの異質さを捨象しない、共通項なき接触から生まれる動的な普遍のありようを問い続ける。」『内在的多様性批判』(久保明教)から。

 

 今日、多様性は肯定され、様々な多様性が人権として認められつつあります。しかしながら、多様性の尊重が相互の孤立を生み出してはいないでしょうか。「均質の普遍ではなく、互いの異質さを捨象しない」「普遍のありようを問い続け」ることが求められています。卒業生の皆さんには、多様でありつつ、普遍である、そのような価値、そして、人と人との関係を考えていっていただきたい。

 

どのような景色が見えるか
 次に、私は、大学は学問を学ぶところであると言ってきました。学問を学ぶということは、単に専門知識や技術を習得するということだけではありません。2023年WBCで優勝した栗山英樹監督は、「見たことのない景色を見させてもらった」と。
 「KINGDOM」で王騎将軍が信に対し、「これが将軍の見る景色です」といいます。「将軍の目には色々なものが見えます。例えばほら…敵の群れを、敵の顔を、そして味方の顔を、天と地を。これが将軍の見る景色です」。信はこの瞬間、「今の一瞬でなぜか全身に力がみなぎった」と感じており、王騎から受け継いだこの景色が、その後の信の成長における道標となります。
 いま皆さんは、大学を卒業します。皆さんにはどのような風景が見えているのでしょうか。それは、美しく、力強く、温かいものであるはずです。

 

 ある学生が私に尋ねました。「私は4回生にもなったがいまだ自分が何をしたいのかわからないと」。そこで、神戸の祥福僧堂師家の岩村宗昂そうこう老師が「禅とこころ」の講義で使われた「森下典子『日々是好日(にちにちこれこうじつ)』を読む」の一節を渡しました。
 「世の中には、「すぐわかるもの」と、「すぐにはわからないもの」の二種類がある。」「人には、どんなにわかろうとあがいたところで、その時がくるまで、わからないものがあるのだ。しかし、ある日、わかってしまえば、それを覆い隠すことなどできない。」
 今、その景色が見えなくてもよいです。ある日、わかる日が来ます。それまで誠実に生きてください。

 

約束の力
 最後に、これから皆さんは社会に出ていきます。皆さんを受け入れる社会とは何か。それは、皆さんが、それぞれの思い、夢、希望を、ぶつける相手であり、そして、皆さんが自分の居場所を見つけるところです。
 教場というドラマがあります。木村拓哉演じる警察学校の教官、風間公親(かざまきみちか)は、適性のない者には容赦なく退校届を突きつける冷徹な人物です。厳しい訓練の連続ですが、そこを貫くテーマは、人間の愛、絆、約束、許しではないかと考えます。政治学者の佐々木毅先生はハンナ・アレントの「不可予言性と約束の力」について、次のように論じています。
 「アレントは、不可予言性に対しても救済策を提示しようと試みている。それは約束の力である。」「約束は、・・・人間の自由の持つ不確実さとその中で発生しうる予見不可能さの大海に対して、予見可能性の「小島」を人為的に創出しようという試みである。約束は同意された目的によって結ばれ、それによって一緒になっている人間集団を可能にする」。風間公親が伝えたいのはアレントの言う約束の力です。人間集団を可能にする「約束」、そこには、人間の愛、絆、許しが必要です。

 

若者の力を信じて
 人類は大きな変化に直面しています。国際秩序が変化し、戦争が日常的に報道されるようになりました。グローバル経済は不具合を露呈し、人々に生活の豊かさをもたらさなくなりました。そもそも、人類は地球温暖化に直面し、宇宙船「地球号」の生態系は人類の生息の場としてとても危機的な状況にあります。
 そのような時期に皆さんを社会に送り出すことになります。しかし、私は人を信じます。特に若者の力を信じています。皆さん、苦難を恐れず、際限のない社会の「大海」へ漕ぎ出していってください。

 

卒業、誠におめでとうございます。

令和8(2026)年3月17日
花園大学学長 磯田 文雄


学位記授与式の様子


磯田文雄学長による式辞


横田南嶺総長による祝辞


野口善敬理事長による祝辞


卒業生代表による謝辞