人権教育研究センター

第28回花園大学人権週間 前夜祭

ドキュメント「ある精肉店のはなし」上映会に期待
太田恭治

 瀬戸内の小さな島「祝島」で繰り広げられる原発建設反対闘争のドキュメンタリーで監督デビューした纐纈(はなぶさ)あやさんが、第二作目に選んだのが北出一家の営む精肉店の約一年間の生活だった。一家は、牛を育て→牛を解体し→自営の精肉店で肉を売るまで一貫した作業をこなす全国でも珍しい家族だ。2012年、貝塚市立屠畜場が閉鎖されることになっていた。その話を私が監督と写真家の本橋成一(大阪府松原市の屠場写真集『屠場』 平凡社2014年に出版)にしたところ、即座に「記録だけでもとらせてほしい」とお願いされ、北出家との橋渡しをすることになった。
 牛を解体し食肉用に生まれ変わらせる仕事場を「屠場」と呼び、この仕事場の労働者へ心無い誹謗や、差別は今も続いている。またその仕事に従事する労働者に被差別部落民が多いことから、部落民への差別としても現れる事が多い。こうした事情から牛の解体の記録映像は、そう多く撮られてこなかった。そこに働く労働者に被害をもたらすことを慮ってであればまだしも、予断と偏見から来る世間のタブー視は根強い。
 この映画は、こうした偏見を吹き飛ばしてしまう力がある作品だ。事実、去年の11月29日(いい肉の日)に公開されると、全国のミニシアター系の映画館は、上映されるたびに満席となった。大阪の第七芸術劇場は、二度のアンコール上映をおこなっている。口コミで広がったこの映画の評判は、観客動員総数5万人を越えようとしている。
 もちろん屠場を撮っているのだから、牛の解体シーンが登場する。しかし命と向き合う北出一家の真摯な仕事はぶりは、命を維持する人間(動物)とは何かを突きつける。また描き出される北出家全員の魅力あふれるキャラクターが心をつかんでしまう。さらに舞台となった貝塚市内の被差別部落(北出家のある)の盆踊り、だんじり祭りなどなど地域の祭りにワクワクさせられながら最後の牛の解体へと映画は進む。
 監督は、チラシのキャッチコピーに「いのちを食べていのちは生きる」と以下のような文章を載せた。長いが以下に引用する。
  大阪貝塚市での屠畜見学会。
  牛のいのちと全身全霊出向き合うある精肉店との出会いから、この映画は始まった。
  家族4人の息の合った手わざで牛が捌かれていく。
  店に持ち帰られた枝肉は、丁寧に分けられ、店頭に並ぶ。
  皮は丹念になめされ、立派なだんじり太鼓への姿をかえていく。
  家では家族4世代が食卓に集い、いつもにぎやかだ。
  家業を継ぎ7代目となる兄弟の心にあるのは被差別部落ゆえのいわれなき差別を受けてきた父の姿。
  差別のない社会にしたいと、地域の仲間とともに部落解放運動に参加するなかで、
  いつしか自分の意識も変化し、地域や家族も変わっていった。
  2012年3月。代々使用してきた屠畜場が、102年の歴史に幕を下した。
  最後の屠畜を終え、北出精肉店も新たな日々を重ねていく。
  いのちを食べて人は生きる。「生」の本質を見続けてきた家族の記録。

大学内のみんなに是非観てほしい作品。その一言につきます。

午後5時~ プレイベント 実演「太鼓張り」を開催します! 
「ある精肉店のはなし」の出演者が太鼓の張替を見せ、参加者にも体験してもらいます。
実演:北出昭さん、葛城小一郎さん(嶋村太鼓店)
解説:太田恭治(本校非常勤講師)

(おおた・きょうじ=人権研センター委嘱研究員・非常勤講師)

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