創造表現学科

2011年度創造表現学科:学科賞(制作部門)

 吉村麗さん 「ダンスパフォーマンスの創作と提示 ~スペシャルユニット Juicy Dolls~」

吉村麗
 

『想いが重なるプロジェクト ~Juicy Dolls~ 』

  Juicy Dolls ― 吉村麗君の率いる5人のガールズ・ダンスユニットのネーミングは、誰からとはなく意見が一致して決まった。ダンスナンバーが、Pussy Cat Dolls の”When I Grow Up”であったから、ユニット名にもDollsが使いたかったのも事実ではあるが。
 吉村君がこのダンスパフォーマンスとそれに至る制作論文で卒業を目指したのは、後期に入ってからだった。当初は昨年のコンテンツ発表会のように「AKB48」であるとか「KARA」とかカワイイ系の「はやりもの」を本人はやりたがっていたのだが、指導教員の福原から「4回生にもなって・・・大人のダンスを目指せ!」と諭され、本人曰く「ちょっぴり大人」のダンスを目指すこととなった。
 子供がいきなり大人には成長しない、このダンスプロジェクトで創造表現学科の身体表現(ダンスパフォーマンス)系の学生が卒業する「雛型」をつくろうと画策していた福原は、ダンスそのものを構成し振り付けてくれる「助っ人」を外部に求めることにした。それが、京都木屋町のDancing Girls Bar ”Go Go Girls”で踊っていた「お気に入りの」プロダンサーのSaraである。吉村君のために集まったガールズは、ダンスサークル「ラブイク」の1回生が3人と吉村君の中学生時代の友人で現在高島屋の販売員をするいつみちゃんの5人で、「大人のダンス」には程遠い素人、教えるプロダンサーのSaraには、 随分と頭痛とストレスの種であったようだ。毎週水曜日のレッスンが終わるたびに、彼女に悩みを聞かされて、「仕掛け人」としては全く以て申し訳ない思いであった。
 レッスンの始まったころの吉村君は、他のメンバーに比べてダンスの技量は明らかに見劣りした。恵まれた体格の割に身体が硬いのだが、何よりも意欲そのものが感じられない。振り付けのSaraにとっては、コンテンツ発表会のフィナーレを飾るパフォーマンス、プロのプライドに賭けても「セクシーな」大人のダンスに仕上げたかったようだし、福原も今年度の創造表現学科の最後を飾るクリエーションとしたかったので、互いに思ったような成果が上げられるのか不安ではあった。 
 しかしなぜだろうか、9月から水曜日ごとに何週間かレッスンを続けることで、みるみるガールズたちの動きに「切れや冴え」とも言えるようなものが見えてきたのである。吉村君も「卒業しなければならない」との思いが強かったようだが、実際にはガールズ全員が自分達にはないSaraの持つ自然な「大人の女」の動きや仕草に彼女たち自身が魅入られて変わって行ったようにも思う。「麗ちゃん、変わったね」、Saraの言葉に安心させられる日がいつの間にかやって来た頃には、ユニットのリーダーとして、吉村君が機能し始めていた。
 12月下旬、コンテンツ発表会を週末に控えた最後のレッスンの水曜日、ダンスも漸く完成した時には1回生の恭子ちゃんから「こんな素敵なダンスに加えて下さってありがとう」の感謝の言葉が吉村君に自然に掛けられた。彼女からも「私の卒業のためのパフォーマンスを助けてくれてありがとう」のお返しがあった。そこには、最後の完成を見届けてくれた3回生ゼミの高木さんと山田さんの姿もあった。その場全体に、この「美しく可愛いいセクシーな」ダンスの完成をみんなで歓び合う快活な雰囲気が出来上がった時に、このダンスパフォーマンスを指導の到達点と決めた目的の大半は、達成されたように思った。
 コンテンツ発表会の当日、フィナーレのステージは驚くほどに素晴らしい成果であった。これは想定外のことであったが、”Go Go Girls”のステージの音響や特に照明が演出上の背景としての効果を増して、踊るガールズたちのパフォーマンスを「実力以上?」に発揮させる結果を齎したのである。もちろん、それを歓喜で受けとめる観客がいてくれてのことでもあったが。今更ながら、ダンスパフォーマンスが、空間表現の極みにあることを思い知らされることとなった。
 改めて思うに、「本も漫画も読まない、だから文章も書けない」吉村君は、1回生では教員と全く会話にならない学生であった。しかし、大学4年間の集大成であるこのダンスパフォーマンスでは、本人の人生航路にとっても創造表現学科の未来予想図にとっても貴重な経験や今後の方向性を示唆する大いなる成果を与えてくれたように思う。それは、「プロジェクト」なる概念の持つ本来的意義だったのかもしれない。
 「想いを重ねること」「経験を共有すること」「繋がりあうことで拡がる関係性」など、「共感」によるコミュニケーションの連鎖が拓くコンテンツ開発の可能性が、生身の身体の表現を通して「温もり」を以て実感されたことであろう。

 とにかく吉村君は、ダンスを通じて成長した。そのことに異論はないだろう。未成年だったユニットのメンバーもこの経験から多くを学んだろうし、周りで彼らのパフォーマンスを見守った連中も「感動」を以て受け入れた。ともに一つの「場」を築き合い、「共感」できたことは、皆にとってかけがえの無い経験となったであろう。
 何がいったい〈クリエイティヴ〉なのだろうか?〈創造性〉の根拠を尋ねるときに、我々が学生諸君と目指す境地は、
「もの(コト)を通じてコミュニケーションすること、誰かに〈愛〉をしめすこと(ジョン前田)」と考える。「共感」や「感動」を以て繋がり合えたこと、その意味で、吉村君の主宰したダンスパフォーマンスである「Juicy Dolls プロジェクト」は、創造表現学科の完成初年度を飾るに相応しい創造性あふれる「制作的成果」であった。

 

文責:創造表現学科 福原正行

※ この文書は、2011年度創造表現学科:学科賞(制作部門)の受賞に関して、その受賞に至る経緯を記録したものである。
 

JuicyDollsPoster
JuicyDollsコンテンツ発表会ポスター