創造表現学科

2011年度創造表現学科:学科賞(研究部門)

 河内晴大くん 「アームレスリングのトレーニング方法とコーチングへのアプローチ」

『アームレスリングのトレーニング方法とコーチングへのアプローチ』論文に関する評価と講評
                                         
 花園大学創造表現学科の第一期生となる2011年度生を代表する「学科賞」受賞の「研究論文」は、〈身体表現〉分野の松久みゆき先生のゼミ生河内晴大君の『アームレスリングのトレーニング方法とコーチングへのアプローチ』に決まった。
 創造表現学科は、その学科の特徴として〈言語表現〉〈画像(マンガ)表現〉〈映像表現〉等の現代文化に欠かすことの出来ない分野を研究・制作の対象や背景とするが、そこに大学の伝統である「新体操」競技に纏わる〈身体表現〉が加わり、より現代的でアクチュアルな教育的成果が期待できるだろうと考えられていた。ただそれが、従来より存在する運動競技や〈身体表現〉分野に限らない、新規に開拓される可能性を持つ 新鮮な分野からの研究活動の成果が現れるとは、想定外であっただろう。河内晴大君の「アームレスリング」に関する表題の卒業論文は、創造表現学科が新たに拓きつつある「研究論文」のあるべき理想形のひとつかもしれない。 
 まずは、「アームレスリング」という競技が、一般に「腕相撲」と想像されるような単なる「力くらべ」ではなく、公正な条件や厳格なルールの下に構築され、身体的鍛錬や技術を必要とする「スポーツ」として公認されるものであることが、河内君の研究論文で明らかにされる。規定や競技ルールを公式なものとするために組織や団体がつくられ、そこを中心に競技会等を運営し競技者を育てるとともに競技そのものの振興を図って行く。まだ揺籃期ともいえる「アームレスリング」に魅入られて、その成長の歩みを共にしようとする河内君の熱意が感じられる論考であった。
 学科賞受賞後に彼に訊ねたことがある。少年野球で肩を壊した経験が、ひょっとしたら彼の競技に対する「備え」の重要性の指摘、正しいトレーニングによる鍛錬や技術的向上及びけがの防止等の主張への強い動機づけになっているのではないかと。残念ながら、意識的な部分ではそのような回答を彼から得ることはなかった。しかし、入学して来て1回生の時に筆者の担当する「デジタル・コンテンツ」の講義教室の後ろの方で、気だるい感じで受講していた当時の河内君の面影は、驚くほどに今はない。当時を振り返ると、野球を断念し、「何となく?」入学した花園大学創造表現学科に、何の期待もしていないような、目的意識のない学生の一人であったのかもしれない。筆者が感じるのは、何がこれ程に彼を変えたのだろうかという疑問である。
 正直なところ我が学科は、明確に「言語(文学)」「映像(映画)」「マンガ」「身体(新体操)」の研究を目指して志望する学生が大半と思っていたが、実際は「何とはなしに」の入学生も数多くいた。しかしそのような学生にも、何かを学びそのことをきっかけに成長して実社会に進んで欲しいとの願いはあった。「難しい書籍は読まないし、だから高度な学術論文なんか書けない」。「卒業制作部門」の学科賞受賞者の吉村君同様の心配はあったが、河内君を始めとする、そのような「猛者」の学生諸君には、元来「身体表現」の研究ゼミであった松久先生と野田先生の両ゼミが、どういう訳か(失礼)オアシスになったようだ。オアシスは、憩いの場ではない、ある種の現実的な「救い」の場になったのだと思う。「人前でまともに話せるのだろうか?」、こちらの心配をよそに見事にPCを使ってのプレゼンテーションで、卒業研究の発表をクリアーしていった学生諸君を見ていると、学科が四年間掛けて目指した教育は、ここでも大半が達成されつつあると感じた。
 さて、河内君の研究論文であるが、それが単に「アームレスリング」の競技スポーツとしての研究や紹介に留まらないのが、学科賞の授賞理由であることの指摘が必要だろう。それは、彼自身の将来のキャリア・プランにも繋がること、「アームレスリング」のトレーニングを通じてのスポーツジム等の「事業化計画」に発展する可能性を秘めた「研究論文」であることだ。それは、従来の文学部が濫造して来た「顧みられることのない」論文ではない。実社会で相手にされない論評ではない。そこに実社会での多くの賛同者共感者を得て、何らかのアクションを呼び起こし、「かたちになる」可能性を持った「事業(ビジネス)」に繋がる可能性があるのだ。そうなれば良い、そのような目標と理想を目指して、河内君が卒業後も「指針とできる」ような研究とその成果がこの論文に盛り込まれ、それが教員皆にも伝わったことが、学科賞授賞評価の全てではないだろうか。
 聞くところによると、この困難なご時勢に河内君は就職先もしっかり決めている。若い伴侶も既にいるらしい。家族を持つと大変であるが、しかし、その彼の研究事業の中で、「肩を壊した」サウスポーに「アームレスリング」を勧め、乗馬のトレーニングのアイディアを出したのも「美しい(であろう)」その奥さんであったことも指摘しておきたい。公私ともに逞しく大人に成長して卒業して行く河内晴大君。家族に支えられ、明確な目標を以て「アームレスリング」と共に成長を続ける彼の未来将来が、より輝かしいものとなることを、学科の皆で祈っている。

文責  創造表現学科 福原 正行

※ この文書は、2011年度創造表現学科:学科賞(研究部門)の受賞に関して、その受賞に至る経緯を記録したものである。

 

卒業論文表紙